「パフェと私」
年に一度の、ここを使う日がやってきました。そう。ぽっぽアドベントです。毎年、企画をありがとうございます。近いようで遠い、Twitterの向こうのいろんなあなたの一年の出来事や思いを1ヶ月に渡って、知ることができる素敵な企画。そうなんです。今年も書かせてもらうことになりました。5日目担当のジジです。
#ぽっぽアドベント2021 今年も遂に始まるよ!本日から12月25日までの25日間、どうぞ一緒に楽しめたらと思います。今年のテーマは「私の望みの歓びよ」です。リンクのカレンダーからも見れますし、このツイートからツリーへ繋げていきます。煩わしい方はミュートしてください。https://t.co/XML21X9qmK
— はと (@810ibara) 2021年12月1日
去年は、ずっと前から知っていたのに、今までは気にならなかったあなた。そんなあなたが最近、気になるの。そんなあなたはアンドリュー・スコット。というお題で書かせていただきました。いいですよね。アンスコさん。
私の望みの歓びよ
さて、今年は『私の望みの歓びよ』というテーマだそうです。さあ、何を書こう。と思いました。相変わらずアンドリュー・スコットさんのことは気になっていて、そのお仕事を追いかけたりしております。ライラの冒険のS2でのお父さん……めっちゃ良かったですよね。そしてそのキャストそのままで別のお話なHBOのオスロ。これまた素晴らしかった。
いつかは、生でアンスコさんのお芝居を見たいと思っています。なんとかコロナ禍を生き延びたいです。みんな(主語でかい)生き延びよう!
今年の私
今年の私はといえば、とべ動物園で4月23日に生まれたカバの赤ちゃんのまんぷくくんに夢中になったりしてました。すべてが丸で構成さてれているあの愛らしいフォルム。もちもちでつるんとしてるかわいいが凝縮された生き物。眺めているだけて癒されるあのかわいいまんぷくくん。ああ、会いに行きたい。
でも、とべ動物園って愛媛にあるんですよ。四国ですよ。我が家からはとても遠い未踏の地。実は四国には足を踏み入れたことがなく、いつかは四国と思っているのですが、やはり他県へ旅行するのはためらわれ……松山空港まで飛行機で飛んで……とか考えている間にとべ動物園も休園していたりとか。そんなことしている間にまんぷくくん! 大きくなっちゃうじゃない! となりましたが、ちょっとためらいます。大きくなってもかわいいことには変わりないのですが。
そんなこんなで、まんぷくくんにはまだ会えておりません。いつかはまんぷくくんをこの目で! というのは来年の課題にしたいです。
それから、第二次パク・ソンウンブームが勃発して、韓国語を勉強し始めたり。いきなりなぜ韓国語を勉強し始めたのかといえば、ソンウンさんがファンミやるとか言ったら、韓国語がわからないと困るからという漠然とした理由からです。(ちなみに、ファンミの予定はありません)
あとは、韓国の映画やドラマを見ている時、看板とかに何が書いてあるのかが知りたくなったからです。看板、重要ですよね。
パク・ソンウンさんの魅力について語り始めると、今回のテーマが変わっちゃうので、セーブしますが、彼もアンスコさんとかマイケル・シャノンと同じ(私の好きな)タイプの俳優さんだと思っております。
そんなこんなで、あっという間に私の一年は過ぎて行き、もう師走です。ぽっぽアドベントも始まり、毎日読ませていただいておりますが、みなとても面白く、そして心にしみる。つくづく、この企画は本当に面白い。その1日を私が埋めるのか。難しい。でも、だらだらと綴らせてください。たまにはこんな回があってもいい。きっと。
パフェのこと
さて、今年は何を書こうかなと思った時、頭に浮かんだのは「パフェ」でした。きっと、Twitterのフォロワーさんは私のことをパフェ好きな人だと思っていると思うのです。月一くらいのペースでパフェを食べに行き、その写真をアップしている、から。先日もその草の根運動の成果で、パフェに誘っていただいたりしました。
パフェ、食べるようになったのは最近なのでした
ですが、実は。パフェ、食べるようになったのは最近なのでした。むしろ、子どもの頃はあんまり好きじゃなかった……のです。
なぜかと言えば、私が子どもの頃のパフェと言えば、カサ増しの為にコーンフレークとかヨーグルトとかが入っていたんですよ。パフェに入っているコーンフレークほどにっくき存在はなく。
食べるスピードを間違えると、アイスクリームやソフトクリームで冷え切った口の中に刺さる凶器のような鋭さで主張してくる、もしくは、ふやけてふにゃふにゃになり、口の裏側にはりついたりする。そんな存在であるコーンフレーク。こいつさえいなければ。と何度殺意を……いや、思ったことだろうか。(個人の主観です)
大人になってみれば、なぜそんなに憎んでいたのかがわからない。コーンフレークも悪くないじゃないと思うのですが、まあ子どもの頃はコーンフレークよりもアイス! そして生クリーム! だったのではないかと思います。
そもそもが、お腹が弱い一族出身ゆえ、冷たいものを食べすぎるとお腹も痛くなるしで、それほど心躍る食べ物ではなかったのでした。
締めパフェという文化
そんな私のなかで変化が起こったのは、札幌で流行した締めパフェという文化の東京進出がきっかけでした。
パフェというのは、私の主観ではありますが、ちょっと前までは子どもの食べ物というイメージがありました。そのイメージが覆ったのが(あくまで私の中で、です)この北の国からやってきた、締めパフェ文化の来航でした。
なにしろ、パフェと合わせる飲み物がアルコール。なにそれ。心躍るじゃないですか。そもそも、私は大福を肴に酒を飲む系です。ケーキ食べながらスコッチだってジンだって飲む。そんなの、合うに決まってるじゃないのと、お店に行ってみました。
まず、パフェのデザインがとてもうつくしかった。グラスにはあらゆる種類の構成物が繊細に盛りつけられている。構造物として、精緻で緻密な計算の上に成立しているんだというのが、見た瞬間にわかる。
ガラスの器というものに、さまざまな色彩や素材の構成物を、断面として魅せることができる。蟻の巣や水族館の水槽のように、本来であれば見えないものがガラスという素材を使えば見える。わくわくしますよね。その上で、それらを崩して食べて行く時に、器の中や口の中でさまざまな食材が混ざった時の意外な効果。
さらに、ガラスの器の中には空間があり、そこにテラリウムのような光景がひろがっている。パフェと言えば、隙間なくアイスクリームやクリームが詰まっているものではなくて? 隙間を埋めるためにコーンフレークが入れられていたのではなくて? それなのにどうして、こんなにも何も入っていない空間に心奪われるだなんて。
冷静に考えると、子どもの頃に食べたパフェと変わらないところもあるわけです。ジャムとゼリーとヨーグルト。そしてフルーツ。場合によってはチョコレートやナッツ、コーンフレーク。
ただ、この構成物がすべて、ひとつひとつが違った名称で呼ばれる。ジャムはコンフィチュール、ゼリーはジュレ。ヨーグルトは(ちょっと変わるけど)リコッタチーズやブランマンジェ。コーンフレークはグラノーラ。呼び方が変わると、高級感が増すこの仕組み、しゃらくせえやと思うのに、わかっているのに踊らされてしまう。
そして、フルーツもスーパーでは買えないような、つやつやのきめ細やかな見た目で形の整った糖度の高い、産地を高らかに謳うそれらは、技術力をして成し得る包丁さばきで美しくカットされ、ガラスの器を華やかに彩る。
海原雄山や美の壺っぽく語りつくすこともできるくらい。この口調であと1000字くらい書いてもいいのですが、鬱陶しいのでやめますね。
なぜ時給よりもはるかに高い、パフェを食べるのだろうか
そんな高級デザート。パフェ。
人気店では、すっかり予約制になり、ネット予約だって瞬殺だし、金額も小洒落たビストロで食べるランチと大差なかったりする。
東京都の最低賃金が時給1013円であるこのご時世に、なぜ時給よりもはるかに高い、パフェを食べるのだろうか。
個人的な観測の範囲ですが、いろんなパフェを食べに行って思うのは、ひとりで来てる人がとても多い。お友達や家族で来てる方もそれなりにいるのですが、ひとりで端正なパフェに向き合い味わい、帰る方が多い。(客の立場の一方的な見方なので、店側からしたらそんなことねーよってなるかもですが)
私がひとりで行くことが多いので、ひとりの方が目につくのかもしれません。
変なことを言いますが、ひとりでパフェを食べる時の感覚というのは、背徳に似ている。そう思うのです。
うつくしくも繊細に、細密な技術で積み上げられ、構築された芸術品のようなパフェという存在。それは、眺めるためではなく、食べるためにある。崩してこその芸術品。
破壊行為のともなう、食べられることで完結するのがパフェ。
そんな行為は、ひとりでひっそりと、それも一対一での対峙が似合うのかもしれないと思うのです。(孤高の行為とか書きそうになりました)
でも、お友達や家族やパートナーと一緒に行っても楽しいですよね。このコロナ禍では、それも難しくなりましたが。またいずれ、そんな日が戻ってくることを祈りたいです。
喫茶店系、豪華フルーツ系
今回は、締めパフェの流れを汲んだパフェを語りましたが、世の中には喫茶店系の上に三角のケーキが丸ごと乗っているパフェもありますし、それこそフルーツの特産地では、豪華でみずみずしいフルーツが繊細にカットされ、盛り付けられているフルーツ系のパフェもあります。そして、パフェの元になったとされる、パルフェやサンデー。トライフルなんかもあったりして、パフェ道は極めると奥深いのではと思うのです。
私はその入り口に立っている。これから、この道の奥へと踏み込んでいくのかこのまま、入り口をうろうろしているのかはまだわかりません。でも、ひとつだけ言えることは、来年も月に一度くらいは、最低賃金を超えるパフェを食べると思います。
パフェを食べること、それが「私の望みの歓び」なのだから。
敢えて、店名などは出しておりませんが、こいつどんなパフェ屋に出入りしてるんだよと興味などありましたら、Twitter@tak1_tam1を遡っていただければと、思います。
さて、明日のぽっぽアドベントは……
さて、明日のぽっぽアドベントは、とばをさんです。ブリティッシュ・ベイクオフについての語りが楽しみです。
ブリティッシュ・ベイクオフ。私も見てますが、この番組の良いところはいろいろありますが、勝者ではなく敗退者を拍手で送り出す。というのが良いな〜って思うのです。
パラドックス定数も見てね!
最後になりますが、2019年の夏に「骨と十字架」という舞台でTLの話題をかっさらい、去年の冬に「オーソドックス」という形で上演した舞台を配信してTLが湧いた、あの「パラドックス定数」の公演が、12月17日(金)より、新宿のサンモールスタジオで始まります。今回は深海探検ものっぽく、ゲストとして「骨と十字架」に出演した、神農直隆さんも参加という形になっております。この師走、お忙しいとは思いますが、ご興味あればぜひ。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。来年が、あなたにとって素晴らしい年になりますように。
「あなたのアンドリュー・スコットはどこから?」
ぽっぽアドベントが始まると、師走が来たな……長いようで短かった1年も、もう終わるね。今年はどんな1年だった? 良い年だった? それほどでもなかったかな。来年はもっと良い年になるといいね! と、まあ。そんな感じになりますが、ちょっと待って。ぽっぽアドベントって今年で2年目じゃない???
#ぽっぽアドベント 2020年も始まるよ〜!なんと今年はカレンダー3つです。ありがとうございます。このツイートからツリーへ繋げていきます。もし煩わしい方はミュートしてください。
— はと (@810ibara) 2020年11月30日
①https://t.co/Rz4ST2zRN2
②https://t.co/uzdBKyLxbs
③https://t.co/KgDg2vcuZg pic.twitter.com/lYvi23Myha
それほどに、去年のぽっぽアドベントが楽しかったのです。ハマっているものは違えど、オタクが好きなものへと注ぐ熱量というのは、同じだなあって思えた。読みながら、そうだよね。ってうなずいたり、そんなこともあるんだ! って、新しい視点が開けたり。
このクっソ忙しい師走。だけど、ちょっとだけ、足を止めて深呼吸して、オタクという大雑把なくくりの広義的な意味での概念上の友人たちの想いというものを、読む。受け止め、共感する。なんて贅沢な時間なんだろう。
毎年、企画してくださる「ぽっぽ」こと「はとちゃん」ありがとうございます。ぽっぽの行動力とその人徳。本当に素晴しいと思うし、その存在に救われている人、いると思います。
ここを読まれている方は、きっと私のフォロワーさんだったり、フォロワーさんのフォロワーさんだったり。そんな、ゆるーいつながりの方が多いのではないかと思います。でも、はじめましての方もいらっしゃると思います。映画やドラマを見たり、お芝居に行ったり小説や漫画を読んだりするのが好きで、趣味でちょっとだけ小話を書いたりもします。まあ、ただのゆるいオタクです。
今年のテーマである「変わった/変わらなかった」こと。
未曾有のパンデミックが起こり、大なり小なり、何かが変わったのではないかなと思います。価値観だったり、世界の見え方だったり、生活だったり。
個人的なことでの「変わった/変わらなかった」ことといえば、謎の皮膚疾患に襲われて(まあ、ストレスと更年期かなって思います)皮膚科通いをしてヒート○ックと決別したことや、薬の副作用で吐き気があったので、白湯を飲むようになったのをきっかけに、鉄瓶を購入して、鉄瓶とともに暮らしていることなどが、変わったこと。
変わらなかったことといえば、去年の暮れにはツイッターのアカウントを消しちゃおうかなと思っていたのに、こうして今も呑気につぶやいていること。などですが、そんな中で「変わった/変わらなかった」今年一番のことは「アンドリュー・スコット」との関わりの変化のことでした。
簡単に言えば、ナショナルシアター・ライブの「プレゼント・ラフター」で「アンドリュー・スコット」を再発見した。という個人的なことを、つらつらと書いて行きます。ある意味では、今まで知っていた人に特別な感情を抱くようになった経緯、です。
www.ntlive.jp
あなたのお時間をすこしだけ頂き、お付き合いくだされば嬉しいです。
気になっていた、というのは経験上、とても厄介なのです。
「あなたのアンドリュー・スコットはどこから?」
といえば、大抵の方はBBCのシャーロックだと思います。私にしても、アンドリュー・スコットという俳優を、見つけたのはBBCのシャーロックのジム・モリアーティ、だと思います。イギリスの俳優さん「あるある」でいうところの、今思えば「バンド・オブ・ブラザーズ」に出てたよね! とか、そういう過去の出会いはありました。
でも、私を含め多くの方が、彼を見つけたのはジム・モリアーティ。たぶん、きっと。当時、観ていて良い意味で「なんだこれは……」とは思ったし、その後もちょいちょいと色々な映画などで目にする度に、気になっていました。
気になっていた、というのは経験上、とても厄介なのです。
そこには、好きになる要素、萌えに育つ核、種子のようなものが存在していることが多い。なにかきっかけさえあれば、その核や種子はあっという間に萌芽して、大きく育つわけです。ジャックと豆の木ではありませんが、一晩で天に届くほど、成長する。それが萌え。
そういった種子や核を持つ、あらゆる存在が世界にはあって、きっかけを待っている。実際に芽生えるのは少なく、大きく育つのはもっと少ない。だからこそ、その種子やきっかけを大切にしてゆきたい。そう思います。
実際、アンスコさん(親しみを込めて略します)という俳優には、いろんなドラマや映画で遭遇するのです。容貌に特徴があって、印象に残りやすいという特質もあるのかもしれません。
繊細で素朴な空気も出せるし、暴力的な狂気に振りきれた瞬間の演技というものは、一瞬で心を掴んでしまう。でも、彼だけに特化したわけではなく、プロの俳優さんというのは、さらっとそういうことをやってくる。
それでも、演技の質というようなものが、肌に合う合わない。受け取りやすい受け取りにくい。というのはあると思います。
こうして、再発見してみれば、好きなタイプの俳優さんだなあと思います。「シェイプ・オブ・ウォーター」や「マン・オブ・スチィール」での悪役で知られている「マイケル・シャノン」という俳優が好きなのですが、大雑把に分けるとアンスコさんも、このタイプになると思うんですよ。注・主観です。
好きなタイプなのに、それも今まで見てきたのに。どうして、自覚なかったの? 発見できなかったの? チルチルミチルの青い鳥のような感じ。身近に居すぎてわからなかった????
そして、また「なんだこれは……」
それでも、予兆はありました。それは、去年の年末にドラマ版の「フリーバッグ」のホット・プリーストなアンスコさんを目の当たりにして「なんだこれは……」って、なったこと。
ご覧になった方はわかると思うんですが、すごく魅力的なんですよ。セクシーだし切ない。ものすごい吸引力がある。
けれど、それはきっかけにはならなかった。そのままだったら、可能性の種子や核を持った「気になる俳優さん」から変化しなかった。
けれど、今年の全世界的な「ステイホーム」期間中に「sea wall」に、出会ってしまった。
この期間、あらゆる媒体が無料でアーカイブを解放してくれ、お家にいながら世界各国のあらゆるエンターティメントが見られたし、沢山見させていただきました。辛い生活の中で唯一の行幸だったかもしれない。
その中で、もっとも心に残った五作品の中に入るのが「sea wall」でした。
「sea wall」つまり「防波堤」というタイトルのアンスコさん一人芝居も、無料で配信されていまして、フォロワーさんたちがすごく推しているので、見てみたのでした。
そして、また「なんだこれは……」と、なったのでした。
カメラに向かってアンスコさんが独白しているだけなのに、その言葉、声の抑揚、表情。すこしだけ視線を落とす、唇を震わせる。髪をかきあげる。声を詰まらせて、沈黙。カメラ越しなのに、録画なのに、そこに居るというリアルな感覚が伝わってくる。動作で空気が動くのも、吐息も、匂いも(実際どんな匂いなのかはわかんないけど)その存在のすべてが伝わる。「なんだこれは……」ってなって、あっという間に、感情が連れさらわれて、気付いたら泣いていた。
その時に、こういう俳優の力。訴えかけることで他人に共感を誘い、感情を巻き込む。こういう力を悪い方向へと行使されたら、やばいんだろうなとか、こういう力を持つ俳優さんたちが正しい方向へと力を使っていてくれてよかったなとか、も考えました。が!
こういうことを考える時点で、惹かれているのを認めたくなくて、必死に抗っていたんだなあと、今になれば分かるのが、面白いです。
そんな感じで、それでも、まだ私の中では、特別な俳優さんにはならなかった。無意識に近づいちゃダメ……って避けてた部分もあると思います。萌えというのは、魂を救済してくれるんですけど、生活がおろそかになるし、部屋は荒れるので(ちゃんと両立できる人もいるのはわかってますが)できれば、これ以上、特別な対象を増やしたくない……とは思ってました。楽しいけど、すごーく大変なのです。
ナショナル・シアター・ライブの「プレゼント・ラフター」
そんな中、ナショナル・シアター・ライブの「プレゼント・ラフター」というお芝居がありました。ノエル・カワードというマルチな才能を持った(役者であり、戯曲も書くし、作曲もする)才人が上梓したコメディ芝居。ノエル・カワードの書くものはゴージャスで楽しいので元々好きだったし、TLに流れてきた現地で見た人の評判がものすごく良かったので、見に行きたいと思っていたのです。まあ、基本的にナショナル・シアター・ライブは全種類、観たい。
たまたま、初日に有休を取っていたので、見ました。期待はしてましたが、それはお芝居が面白いだろうという期待で、まさかアンスコさんという俳優が、自分の中で「特別」になるだろうだなんて、1ミクロンも期待してなかった。
内容に関して、ナショナル・シアター・ライブのサイトから引用しますね。
スター俳優ギャリー・エッセンダインが海外ツアーに出かける準備をしていたところ、個性的な面々の訪問を受け、彼の生活はハチャメチャに――。現代の名声・欲望・孤独を見事に投影した作品に仕上がっている。主演は、ドラマ「SHERLOCK」のジム・モリアーティ役など映像分野でもおなじみのアンドリュー・スコット。
個人的なことですが(まあ、これずっと個人的な話しかしてないですが)最近疲れていて、ざっくり言うところの重たい話を見るのがつらい。それはいろんな種類の現実がつらいから。そこか目を背けちゃいけないし、意見は言っていこうとは思うんですが、正直、フィクションの世界では、ぱあっとした華やかな感じ? のものを見たいなって思っていたところに、これですよ。ご覧になった方しかわからない言い方で、すみません。
スター俳優の日常を、面白おかしく魅せる。華やかだし、セリフの応酬のウィットに富んだやりとりの軽妙さとか、衣装も美術も素敵だし、何と言ってもアンスコさんの演技がすごかった。
ぐいぐい引き寄せられる。お芝居の中のセリフにもあるんですが、彼は太陽のようで、その周りを人々が回ってる。けれど、そういったところに彼が疲弊していて孤独を感じているのも、伝わってくる。
基本的に俳優さんはそれができていて当たり前だし、それができる俳優さんはたくさんいる。
でも、人ってみんな違うので、向き不向きがある。こんなにもたくさんの俳優さんがいる中で、自分向きの俳優さんに出会う。というのは、それこそ奇跡だと思う。
その言葉、声の抑揚、表情。感情を爆発させたり、困惑したり、笑ったり。すこしだけ視線を落とす、唇を震わせる。髪をかきあげる。カメラ越しなのに、録画なのに、そこに居るというリアルな感覚が伝わってくる。動作で空気が動くのも、吐息も、匂いも(実際どんな匂いなのかはわかんないけど)その存在のすべてが伝わる。圧倒的にチャーミングで、放っておけない。彼のためなら手助けしたい。そういうオーラが出てる。失礼ながら、こんなにも華やかなチャーミングさを爆発させられる俳優さんだとは、思っていなかった。んですね。「なんだこれは……」ってなって、あっという間に、感情が連れさらわれて。
ああ、捕まった。もう、逃げられない。観念するしかない。
私は、アンスコさんの演技がすごく好き。
って、思いました。
感情の乱高下のスタート
よく、恋に「落ちる」って言いますが、それは感情の落差というのを表しているのだと思います。感情がフラットな凪いだ状態から、激しく乱高下する。それは落ちたり上がったりする。恋に落ちるというのは感情が揺れること。
心が攫われる瞬間っていうのは、自分では予測不可能ですし、どの瞬間に心を掴まれたのかは、判然としないことが多い。気づいた時には、取り返しのつかないことになっていて、捕まっちゃったなって思う。私は割と鈍い方で、捕まった瞬間はあまりよく覚えていない、数日してから、あれ? なんだか変だぞ? ってなることが多い。
脚本を勉強している時によく言われたのは、心を揺さぶるには、落差が大切。ということ。登場人物の感情を高いところから落としたり、低いところから跳ねあげろ。その心の揺れる幅が大きいほど、見ている人は惹きつけられる。言わば、ジェットコースターや吊り橋効果ってことを利用しろということなんですが、真理をついてると思うんですよね。
「アンドリュー・スコット」という俳優は、モリアーティとか007のスペクターでの、癖のある狂気に振り切れた悪役というイメージが強い。私もそうしたタイプキャストに、囚われていなかったとは言えない。もっとも「フリーバッグ」での、誠実で不器用でそれでいてキュートなアンスコさんも、「sea wall」での繊細なアンスコさんも、自分の中に積み上がっていた。けれど、まだ落差が足らなかったのかもしれない。
「プレゼント・ラフター」の人気俳優ギャリー・エッセンダインでの、よく動きよく笑い、嘆き絶望し、舞台の上を縦横無尽に動きながら、エネルギッシュに抑揚を自在に操り、魅力的に演じるその「アンドリュー・スコット」の姿に、自分の中の既成概念が崩れた。そして、その落差に感情を掴まれた。感情の乱高下のスタートです。
もしかしたら、舞台での彼にもっと早く触れていたら、もっと早くにアンスコさんという俳優が自分のなかでの「特別」に「変わった」のかもしれません。
そこからの私は、「プレゼント・ラフター」に通いつつ、戯曲を三種類取り寄せて読み比べたり、他の人のギャリーと見比べたり、アンスコさんの過去作品を掘り起こしたり、どうしてもっと早く……アンスコさんに……そうしたら、Old Vicの配信お芝居「Three Kings」も観れたのに……。と思いつつも、楽しく過ごしています。
結果として、Old Vicの配信お芝居「Three Kings」はリバイバルがありまして、無事に見ることができました! 本当に良かった。
以上、幸福にも「アンドリュー・スコット」との関わりが「変化したこと」でした。
「変わってない」こと。
最後に、これまた個人的な話になりますが。私の守備範囲はover40でして、基本的に40歳より上の年齢の俳優さんが大好き、なんですね。
そこで、ふと思って、年齢を調べたらアンスコさんは1976年の10月生まれで、日本で「プレゼント・ラフター」をやっていた時44歳のお誕生日を迎えた頃でした。
つまり、over40ですね。40歳の壁を超えた辺りのお仕事から、私の心に響くようになってきたってことなの……かな!
そんなわけで「変わってない」こと。でもありました。
その法則に当てはめると、今活躍している若くて魅力的で演技も上手な俳優さんたちが、いずれ40歳の壁を超えてくるわけですよね。来年はどんなover40俳優との出会いがあるのかと思うと、今からとても楽しみです。
最後に……
この状況が落ち着いて、ウェストエンドも復活して渡英できるようになり、アンスコさんのお芝居を生で観れるようになるといいなって思う、年の瀬の「ぽっぽアドベント」でございました。
まとまりのない文章を、最後まで読んでくださって、本当にありがとうございまいた。
明日は……
1・藤見よいこさん
adventar.org
2・たぬきさん
adventar.org
3・ふじおさん
となっております。楽しみです!!
これを書いていたり、お芝居に通っていたりしたので読めてないアドベント参加作品があるので、これからもりもり読みたいです。通っていたお芝居 ↓ すごくお勧め!!!
では、一足早いですが、よい年の瀬を! 来年は素晴らしい年になりますように!